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遺産が株券だった!どのように相続すればいいの?

一昔前の株式運用といえば、一部の資産家のマネーゲームという印象でした。

しかし、現在では、小単位から有名企業の株式をカンタンに購入できて、多少のリスクを負いながらも将来の蓄えを残すための有効な手段になっています。

株式運用が身近になった現代だからこそ発生する悩みが「故人の遺産を整理していたところ、株券があった」というケースです。

株券を口数に応じて分配する?

それとも売却して分配する?

売却するにしても、タイミングはいつ?

遺産が『株券』になっただけでも考え事がたくさん増えてしまいますね。

今回は株券の相続方法についてお話ししましょう。

1 株式には名義がある?

まず株式の基本的な性格について触れておきましょう。

株式、手元に存在するならば『株券』は、金銭的な価値はあれども買い物などに利用できるお金とは全く異なるものです。

株券自体では買い物をできるわけではなく、株式を所有していることで配当金が得られて、譲渡・売却することで換金することができるものです。

株券を見たことがない方もいると思うので、株券についても触れておきましょう。

株券の額面は『壱(一)株券』や『百株券』などのように株式の単位を表しています。

株式の相場は企業ごとによって異なるので、同じ一株でも企業によって換金価値が全く異なってくるわけです。

そして株券の特徴的なところは、裏面に『株主氏名』の欄があることです。

ここが一般に流通している現金や商品券などとは異なるところですね。

つまり、裏面に記載されている名義人のほかには売却や譲渡ができないわけです。

遺産が株券の場合には、単に現金を分配した場合のように自分が手にしたからと言っても自由に使えないことになりますね。

そこで必要になる手続きが「名義変更」です。

2 株券の名義変更手続きってどうするの?

株券の名義変更は、ただ株券を手に発行会社で名義の書き換えをお願いする…のではありません。

手続き方法は株式が上場株式か、非上場株式かによって異なります。

まず、上場株式の取引は『証券会社』を介して行われるので、証券会社での手続きが必要です。

株主は証券会社に株取引専用の口座を開設しているので、相続した株券の名義変更には、取引をしていた証券会社の名義変更手続きからスタートする必要があります。

その後は株式発行会社での名義変更手続きですが、これは証券会社が手配してくれるので相続人が手続きをする必要はありません。

非上場株式では、市場(ニュースでよく耳にする『東京証券取引所』や『ジャスダック』などのことです)での取引が行われていないので、それぞれの株式発行会社での手続きが必要になります。

3 現在は『株券』が廃止されているってホント?

実は、2009年から『株券電子化』がスタートしており、現在では上場企業の株式を購入しても紙ベースの株券は発行されていません。

上場企業の株式は『証券保管振替機構(通称:ほふり)』と証券会社に開設された口座において電子化されています。

株券の電子化によって、株主は株券の紛失や盗難を防止し、売買の際に実際に株券を手渡したり受領するという手間も省略できるようになりました。

2009年の株券電子化に伴い、多くの株主が手持ちの株券を証券会社を通じてほふりに預託し、株券電子化の手続きを済ませていますが、問題は電子化しないまま株券を持ち続けていた、いわゆる『タンス株券』の存在です。

株券電子化の直前まで、証券会社や株式発行会社は「電子化はお済ですか?」とアナウンスを続けてきましたが、2008年末頃の手続き有効期限を過ぎて手続きをしないままの株券は、電子化の実施と同時にただの紙切れになってしまったのです。

こんなふうに言うと「遺産整理のなかで株券が出てきたけど、ただの紙切れなの?」と残念がるかもしれませんが、そうではありません。

『株券』自体が株式の取引に使えないだけで「株式を保有していた」という事実は株式発行会社によって『特別口座』が開設されており、権利は保全されているのです。

言うなれば「会員証の有効期限は過ぎたけど、会員登録は生きている」という状態と同じ。

つまり所定の手続きによって、保全された株式を有効にできるわけです。

4 眠っていた株券の名義変更手続きはどうすればいいの?

電子化されていない株券は、株券自体の効力は無効になっていて、その権利は特別口座に移されて保全された状態です。

ここからの手続きは、相続が発生したタイミングと株券電子化のタイミングによって異なります。

まず、株券電子化前に相続が発生した場合は

・相続手続の依頼書や同意書

・特別口座の開設請求書(『失念救済請求書』などの名称も使われています)

・印鑑票

などが必要です。

これは相続のみならず、故人の生前に株券を贈与されている場合も含まれます。

一方、株券電子化以後に相続が発生した場合では

・相続手続の依頼書や同意書

・特別口座の口座振替申請書

などが必要です。

これらが金融機関の必要書類で、さらに相続を証明する書類として

・遺言書(公正証書遺言書でない場合は家庭裁判所の検認証明書も必要)

・遺産分割協議書

・調停、審判による分割の場合は調停調書や審判書

・ 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本

・相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明

などです。

金融機関によって必要書類は異なりますが、概ね必要書類などは大差がありません。

5 まとめ

株券の相続について紹介したので、カンタンにおさらいしましょう。

・株券は2009年に電子化されており、紙ベースの株券は効力を失っているが、特別口座に移されて権利は保全されている

・特別口座に移された株式の効力を回復するには、相続を証明する書類などを用意して口座の名義変更や開設などの手続きが必要になる

株式を相続した多くの人は「株式を購入していたなんて知らなかった!」と驚くそうです。

ちょっとしたへそくり程度で株式運用を始めていたなんて人も多いそうなので、、遺産整理の際には眠っている株券がないかをしっかりと調べたほうがよさそうですね。