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相続放棄した財産はどうなるの?

相続放棄は財産の相続を全て放棄することです。

財産といっても、相続の場合は預貯金や不動産のようなプラスの財産もあれば借金や未払金のようなマイナスの財産もあるわけですから、放棄という選択肢をとるのも賢明であるケースは多々あります。

では、相続放棄された場合、プラスの財産は誰かのものになるのでしょうか?

マイナスの財産は帳消しになって貸主が泣きを見ることになるのでしょうか?

今回は「相続放棄された財産の行き先」についてお話ししましょう。

1 行き先のない財産は『法人』になる?!

例えば独居の老人が遺言状を遺すこともなく亡くなった場合や、すべての法定相続人が相続放棄をした場合、財産は民法上の規定によって『相続財産法人』という存在になります。

『法人』というと会社や団体のように聞こえますが、ここでいう法人とは、法人本来の意味である「人間ではないが法律上の人格を認められて法律行為を有効にし、権利義務の主体となりうる資格を与えられた存在」を指します。

相続放棄を受けた財産は、いわば「宙に浮いた」状態です。

既に権利者が亡くなってしまい、その相続人さえも権利を主張しなくなった以上、財産自身が権利主体となる必要があるわけです。

2 相続財産管理人の業務とは?

財産が相続財産法人になるには、利害関係者(例えば故人に対する債権者など)や検察官が家庭裁判所に申し立てる必要があります。

申し立てを受けた家庭裁判所は、相続財産管理人を選任します。

相続財産管理人に選任されるのは、主に地元の弁護士で、相続財産管理人に選任された弁護士が財産の清算をおこなうことになります。

相続財産が法人化することによって、財産を管理する弁護士が「法人の社員」になって財産の清算をおこなう、と考えれば分かりやすいでしょう。

まず相続財産管理人に選任された弁護士は、相続財産法人の『登記』をおこないます。

会社が法人化する際には必ず法務局で登記申請がおこなわれますよね。

『法人化』ですから、この場合も登記が必要になります。

さらに相続財産管理人は裁判所で『公示送達』の手続きをとります。

これは、全国の裁判所で「この人の相続人はいませんか?」と掲示する手続きで、隠れた相続人を探すためのものです。

プラスの財産であれば「実は私も相続人です!」と名乗り出ることがあるかも知れませんが、マイナスの財産であればわざわざ名乗り出て借金返済の請求を受けるような人もいないでしょうね。

公示送達によってやはり相続人が不在であることが判明すれば、相続財産管理人が不動産や預貯金などを整理し、プラスの財産によってマイナスの財産を清算します。

この手続きによって借金などが清算されていくので、故人に貸金がある人だけが泣きを見るという事態は回避されることになります。

もしマイナスの財産を補ってもなお余りある場合は、残った財産は国庫、つまり国のお金になりますが、マイナスを補えなかったからといって国が返済を負担してくれるわけではありません。

3 相続放棄してもお金がかかる?!

相続放棄をすれば、故人が遺した借金などを含めて一切のお金がかからなくなると思っていれば、これは大きな間違いです。

まずは不動産の固定資産税です。

固定資産税の納税義務者は、その年の1月1日時点の所有名義人です。

もし、1月1日よりも前に不動産の相続が発生し、1月1日よりも後に相続人が相続放棄をした場合、相続人には固定資産税が課税されます。

ひとたび適法に課税された固定資産税が、その後の手続きで無効にはなることはないという判例も存在します。

もちろん、相続放棄が完了した後は納税義務が科せられることはありません。

「固定資産税の課税時点」の状態が重要、というわけですね。

もうひとつ、無視できないのが「相続放棄にかかる費用」です。

実はここが非常に重要。

相続財産管理人は家庭裁判所が選任しますが、選任された弁護士の費用は国が支出するのではなく、相続人が支出することになるのです。

弁護士費用は放棄する財産の金額によりますが、最低でも数十万円、場合によっては数百万円の費用がかかるケースもあるというのだから驚きますね。

4 まとめ

今回は相続放棄された財産の行方について紹介しました。

ここで少しおさらいです。

・相続放棄などによって相続人不在になった財産は、利害関係者などの申し立てによって『相続財産法人』となる

・相続財産法人になると、家庭裁判所が相続財産管理人を選任して、隠れた相続人を探すために『公示送達』をしたり、財産の処分をおこない、債権者への支払いなどに充てる

・清算された相続財産に余剰があった場合、財産は国庫に帰属される

・相続財産管理人の選任は家庭裁判所がおこなうが、費用は相続人が支出することになる

相続放棄を選択すれば「すべてがなかったことになる」という訳ではありません。

相続財産管理人の選任費用のことを考えれば、相続財産を処分していく過程で余剰が発生することもあるので、カンタンに相続放棄をするのではなく、限定承認を検討することも有効かも知れませんね。