794415c93ab0b53af82db40926b9e857 S

相続税対策として代表的な生前贈与の一つ暦年贈与について

相続税対策として代表的なものが生前贈与です。

ただし、生前贈与には贈与税がかかるので、生前贈与により相続税を軽減しても、その軽減分以上の贈与税を徴収されては全く意味がありません。そこで、生前贈与をする際の贈与税対策が必要で、その一つに暦年贈与があります。

以下では、この暦年贈与について解説をいたします。

 

暦年贈与とは

 

贈与税の基礎控除額は、110万円までです。

この基礎控除額の範囲内でしたら、贈与税を支払うことなく、親から子などへの贈与を行うことができます。

贈与税の申告も不要です。

 

毎年、この基礎控除額内(基礎控除額を多少超えた水準)での贈与を繰り返すことにより、ある程度まとまった金額の贈与を、非課税(又は少額の税金)で贈与することを暦年贈与といいます。

この方法は、対象となる贈与の金額が110万までと少額ですが、簡単で明瞭、かつ確実な節税方法です。

 

基礎控除を多少超えた水準での暦年贈与について

 

なお、資産に余裕のある方でしたら、相続税の税率は200万円まで10%ですから、毎年310万円の贈与までは、税率10%で贈与できます。

仮に、毎年310万円を5年間に分けて贈与した場合には、1,550万円の贈与が可能で、支払った贈与税の金額累計は155万円です。

 

一方、1,550万円を一括で贈与した場合にかかる贈与税の金額は、648万円です。(親から子への贈与で子が成年の場合などを除く、税率45%)暦年贈与による節税の効果は、493万円にのぼります。

 

暦年贈与のメリットとデメリット

 

暦年贈与のメリットとしては、簡単・明瞭・確実な点があげられます。

基礎控除額内の贈与であれば、贈与税の申告もいりません。

毎年110万円以下での贈与を繰り返すだけですから、非常に簡単です。

また、贈与を受ける人が誰であっても、この制度が利用できる点もメリットの一つです。

 

一方、暦年贈与のデメリットとしては、利用可能な金額が少額であること、まとまった金額を贈与するには長期間かかるため、暦年贈与の途中で相続が発生する可能性があることなどが上げられます。

 

相続時精算課税制度について

 

なお、相続税対策として行う生前贈与の際に利用できる節税手段としては、暦年贈与の他に、相続時精算課税制度というものがあります。この制度は、暦年贈与と共に、生前贈与の際の節税対策の代表格です。

 

これは、贈与した年の1月1日時点で60歳以上の方が、同じ時点で20歳以上の推定相続人及び孫に対して贈与した場合、2,500万円まで、贈与税を非課税、2,500万円超の部分については一律20%の贈与税を課税するというものです。

 

ただし、この制度を利用した贈与は、相続税の計算の際に、相続税の課税の対象となる遺産総額に含まれます。

そして、その結果計算された相続税から、相続時精算課税制度を利用した贈与の際に支払った贈与税を控除して、実際に納税する相続税額を定めます。

このように、相続時に精算をするのでこの名があります。

 

なお、相続時精算課税制度は、2,500万円を超えた部分について、一律20%の税率で済むという点も魅力です。

贈与税は、強度の累進構造を持っており、2,500万円の贈与だと、50%となります。

相続時に精算されますから、単純に、この税率の差が節税の金額にはなりませんが、それでも大幅な節税といえます。

 

相続税対策として、暦年贈与と相続時精算課税制度のどちらを使うか

 

さて、相続税対策として、暦年贈与と相続時精算課税制度のどちらがよいかということについてですが、一概には言えませんが、相続財産が大きい時は相続時精算課税制度を、金額が少額な時は、暦年贈与を利用した方がよいといえます。

 

相続時精算課税制度は、父母、祖父母の4人から、父母の子(祖父母から見れば孫)に1人対して贈与した場合、2,500万円×4人=1億円までを非課税で贈与できます。

このように、金額の大きな贈与の場合には、この制度の利用がおススメです。

 

ただし、相続時精算課税制度は、贈与を受ける者が、法定相続人(又は孫)である場合にしか適用されません。

一方、暦年贈与は、誰に対する贈与に対しても適用されますので、法定相続人等以外に贈与する場合には、暦年贈与を利用します。