数次相続の遺産分割協議書について
数次相続とは、遺産分割協議の前に既に相続人が死亡しており、その地位を相続人の相続人が引き継いだ状態のことをいいます。
この数次相続の場合、相続人間の遺産配分の方法を定める遺産分割協議書はどのように作成するのかについて、以下で解説します。
数次相続とは
例えば、甲土地がA名義であったとします。
さて、Aが亡くなり、Aの相続人がB、C、Dの3人であったとします。
B、C、Dは、甲土地の名義を亡くなった被相続人Aの名義のままにしていたとします。
Aの死後、甲土地に居住していたのはBで、他の2人の相続人CDは、甲土地から離れた土地で暮らしていたとします。
さて、今度は、Bが亡くなりました。
Bには、子E、Fがおり、甲土地はBの死後、Eが住み続けることになりました。
そこで、被相続人Aの名義をEに直すことになりました。
この場合には、Aの相続と、Bの相続の2つの相続を行わないと、AからEへ甲土地の名義を直すことはできません。
このように、主に不動産登記において、2つの相続手続きを経なければ名義の変更ができないような相続を、数次相続といいます。
数次相続における遺産分割協議書の書き方
数次相続で用いる遺産分割協議書は、2つの相続の遺産配分方法を定めるものでなくてはなりません。
上記の例でいると、Aの相続とBの相続に関して、それぞれ遺産の帰属先を指定するものでなくてはなりません。
つまり、Aの相続に関しては、B、C、Dが遺産分割協議者となり、甲土地をBが相続によって取得するという内容の協議書を作成します。
ただし、ここで、Bは既に亡くなっていますから、Bの相続人E及びFが、B相続人E及びB相続人Fとして、遺産分割協議に参加し、協議書に実印を押印しなくてはなりません。
また、Bの相続に関しては、Bの相続人E及びFが、甲土地をEに取得させるという内容の遺産分割協議書を作成します。
なお、上記の2つ相続に関する遺産分割の協議内容を、1枚の協議書にまとめることができれば、数次相続に関する遺産分割協議書は1枚で済みます。
一方、2つの相続に関する遺産分割協議の内容を1枚の協議書にまとめることが不可能な場合には、遺産分割協議書は、相続ごとにそれぞれ2通作成します。
相続があったら早めの相続登記を
上記は非常に簡単な例ですが、実際の数次相続はこの例よりはるかに複雑です。
従って、数次相続はできるだけ避ける必要があります。
数次相続を避けるには、相続が開始したら早めに相続登記を行っておくことです。
不動産の表示の登記とは異なり、相続登記は行わなくても国から罰せられることはありませんので、相続登記を行わない方も結構いらっしゃいます。
しかし、相続登記を行わないままでいると、数次相続となる可能性が高くなり、そうすると手続きが非常に複雑になります。
それ以外にも、不動産を巡るトラブルに巻き込まれる可能性も非常に大きくなりますから、相続があったら早めに相続登記を行うのが、何よりの得策です。