暦年課税制度について学ぼう!相続税対策しっかりできてますか?
相続税対策として、相続開始時点での相続財産の価額をできるだけ低くしたほうがよいことは当然ですが、そのために有効な方法が生前贈与です。
しかし、生前贈与には、贈与税の負担という大きな問題があります。
そこで、今回は、生前贈与に対して課される贈与税の課税方式の1つである暦年課税制度について解説します。
暦年課税制度とは
暦年課税制度とは、通常の贈与税の課税方式のことで、1年間に行われた贈与に係る贈与財産の評価額から110万円の基礎控除額を差し引き、その残額に対してその価額に応じて10%から55%までの8段階の贈与税率を乗じ、贈与税額を計算するというものです。
例えば、AからAの弟であるBに対して1年間に3,000万円の現金を贈与した場合には、その贈与に係る贈与税額は(3,000万円−110万円)×50%−250万=1,195万円となりますが、このような計算で税額を決定し課税を行うのが暦年課税制度です。
なお、贈与税は受贈者が支払いますから、この例で税務署に贈与税を納めるのは贈与財産の受け手であるBとなります。そして、贈与税の申告は、贈与があった年の翌年の2月15日頃から3月15日頃の申告期間に行わなくてはなりません。
相続時精算課税制度とは
生前贈与の際に課税される贈与税の課税制度には、暦年課税制度のほかに、相続時精算課税制度というものもあります。
これは、60歳以上の方が、20歳以上の推定相続人又は孫に対して贈与を行う場合に、贈与財産の価額を2,500万円までは非課税、2,500万円超の部分については一律20%の贈与税を課すという制度です。
しかし、この制度を利用して生前贈与を行った場合には、贈与者に相続が開始した場合には、この制度を利用して生前贈与を行った財産の価額は、相続税の課税対象財産に含まれることになります。
その一方、それによって計算された相続税額から、生前贈与時に支払った贈与税額があれば、それを税額控除することができます。
例えば、60歳以上のCが、20歳以上のCの子Dに対して3,000万円の現金を贈与した場合で、相続税精算課税制度を利用したとすると、生前贈与時に支払う贈与税額は、(3,000万円−2,500万円)×20%=100万円となります。
相続時精算課税制度を利用する場合には、贈与を行った年の翌年の贈与税の確定申告期限までに、贈与税の申告書に「相続時精算課税選択申出書」を添えて、税務署に提出しなくてはなりません。
なお、一度、この選択申出書を提出すると、以後は、暦年課税制度を利用することはできなくなります。
暦年贈与と相続税対策
例えば、毎年110万円ずつ10年間贈与を繰り返すと、1,100万円の贈与を非課税で贈与できます。
また、毎年200万円ずつ10年間贈与を繰り返すと、年間9万円、10年間で90万円の贈与税の支払いで2,000万円の贈与財産を贈与できます。
暦年贈与利用した相続税対策は、贈与税の基礎控除額110万円以内か、それを僅かに上回る水準の贈与を毎年繰り返すことで、将来の相続財産を減らし、将来支払うべき相続税額を引き下げることで行います。
なお、相続税の計算の際に、相続開始前3年以内に、相続人が被相続人から暦年贈与によって受けた贈与財産の価額は、相続税の課税価額に含めなくてはなりません。
その一方で、その贈与について納税した贈与税がある場合には、その価額を計算された相続税額から税額控除することができます。