突然の事故の際相続はどうなるの?損害賠償金と相続の関係性とは
被相続人が交通事故で死亡した場合に、その遺族がその損害賠償金を受け取る場合があります。
その場合、その遺族が加害者や保険会社から受け取る損害賠償金の相続税法上の取り扱いはどのようになるのでしょうか。
今回は、この問題について解説します。
交通死亡事故で遺族が受け取る損害賠償金には相続税はかからない
交通事故によって被相続人が死亡した場合に、その遺族が加害者又は加害者が加入していた保険会社から受ける損害賠償金に対しては、相続税は課税されません。
これは、賠償金を受け取った遺族の所得と考えられるため、相続財産には該当しないとされています。
ちなみに、被相続人の死亡を原因としてその遺族が受け取った損害賠償金等は、所得税法上でも非課税扱いとなっていますから、結局のところ、その賠償金には税金はかからないことになります。
遺族が受け取る損害賠償金に相続税が課税される場合について
例えば、Aが交通事故で重傷を負い、加害者であるBに対して怪我の治療費や慰謝料等の損害賠償金を請求していたとします。
ここで、Aが、B又はBの加入している保険会社から損害賠償金を受け取る前に、交通事故とは別の原因で死亡したとします。
このケースでは、Aの相続人Cは、Aが請求していた交通事故の損害賠償金をAに代わって受け取ることになりますが、この場合には、Cが受け取る損害賠償金には相続税が課税されます。
つまり、もし仮にAがB又はBの加入している保険会社から損害賠償金を受け取った後に死亡していれば、Aが受け取った損害賠償金は現金又は預金として、相続税の課税対象となります。
これと同じ道理で、Aが損害賠償金を受け取る前に死亡した場合におけるCが相続する損害賠償請求権は債権として相続税の対象となります。
被相続人が損賠賠償金の支払い債務を残して亡くなった場合について
今度は反対に、交通事故の加害者が亡くなり、その加害者が被害者に対して多額の損害賠償金の支払い債務を残した場合について考えます。
亡くなった交通事故の加害者が自動車の任意保険に加入していた場合には、原則保険会社が損害賠償金のすべてを支払いますから、加害者が多額の損害賠償債務を負うことはありません。
しかし、加害者が任意保険に加入していない場合には、保険会社からの補償は死亡3,000万円、後遺障害4,000万円ですから、場合によっては、多額の賠償金の支払い債務を加害者が負う場合があります。
特に、危険運転致死傷罪に該当するような交通事故で被害者を死亡させたような場合で、加害者が任意保険に加入していない場合には、間違いなく、加害者が多額の損害賠償債務を負うことになります。
損害賠償債務と相続放棄について
交通事故の加害者となり多額の損害賠償債務を負った者が亡くなった場合、その遺族が亡くなった加害者に代わって、その損害賠償の支払い義務を承継します。
しかし、遺族は、そのような賠償金を支払えないのが通例です。その場合には、相続放棄を行えば、遺族はそのような債務を引き継がなくて済みます。
相続放棄を行うと、被害者が十分な賠償金を受けられない等の問題もありますが、相続人が自己の責任に基づかないで多額の債務を負うということも問題です。
相続放棄は法律上認められた合法的な手段ですので、問題はあるにせよ、このようなケースでは相続放棄を行ったほうが合理的です。