建物の相続税評価はどうやって決まるの?
不動産を相続する場合、土地であれば国税庁が公表している路線価や評価倍率を元に相続税路線価を計算することで相続税が確定します。
これは国税庁のホームページを閲覧するなどの方法で、自分でもカンタンに概算値が算出できます。
では、建物の場合はどうでしょう?
建物の財産価値は、公的機関によっても公表されていませんし、不動産業者が店頭表示している価格によって決まるのであれば、景気の動向で激しく上下してしまいます。
一体、どうやって相続税評価が決まっているのでしょうか?
今回は、建物の相続税評価の方法についてお話しましょう。
建物の評価=『固定資産税評価額』
自身の土地や、相続する土地の上に建っている建物を相続する場合、考え方は非常にシンプル。
建物の相続税評価は固定資産税評価額と同じだからです。
毎年4月頃に郵送される『固定資産税納税通知書』に添付されている『固定資産税課税明細書』を確認すれば、各建物に対する固定資産税評価額が記載されています。
では建物の固定資産税評価額はどのようにして決められているのかというと、建物の場合は『再建築価格方式』という方式が採用されています。
これは、建物の構造や基礎、屋根や外装、内部の設備などを材質ごとに評価して合計することで決まります。
一口でいえば「同じ材料で同じ建物を再建築した場合にかかる費用」です。
ただし、再建築方式では材料の高騰などによって、実際の建築費用よりも算出された理論値が上回ってしまうことがあります。
建物の価値は老朽化に伴って年々低下していくのが当然なので、算出した数値から経年を考慮して減算されます。
建物では、概ね建築費用の60~70%程度になるのが一般的です。
他人に貸すための住宅の場合は?
土地の相続税路線価は、自分で使用する目的の『自用地』よりも、他人の建物が建って借地権が設定されている『貸宅地』のほうが価値が減算されて、相続税も安くなります。
建物にも同じことが言えます。
具体的には、アパートやマンション、貸家などの場合。
アパートやマンション、貸家などは、自身の所有物であっても第三者に貸し与えることを目的とした建物です。
賃貸借契約を結んでそこに居住する住人には『借家権』が発生し、建物の所有者といえども勝手に処分ができません。
一軒家であれば自由に売買することも可能ですが、第三者が借り受けている建物の場合は住人の合意が必要になるので、自由な処分ができないという面では不利な財産となります。
この場合、建物の固定資産税評価額から借家権割合30%が減算されます。
例えば、固定資産税評価額が1億円のマンションの場合、借家権割合30%が減算されるので、相続税の評価額は7,000万円になります。
元々、建物の固定資産税評価額は建築費用の60~70%程度なので、そこからさらに30%の借家権割合による減算が発生することになります。
つまり、アパートやマンションの場合は、建築費用の50%程度が相続税の評価額になると考えることができます。
まとめ
建物の相続税評価について紹介しましたが、カンタンにおさらいしましょう。
- 自分で使用する目的の建物の場合、相続税の評価額は固定資産税評価額と同じ
- アパートやマンション等、他人に貸すことを目的とした建物の場合、借家権が発生するので30%が減算される
紹介したとおり、アパートやマンションなどは相続税評価を下げることができるので、節税対策として注目されています。
建物の相続税評価は土地の評価方法と比べるとシンプルなので、相続の発生に先駆けて相続税の計算をしておき、いざその時がきても困らないように準備しておくことも重要でしょう。