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相続証明書ってなに?

財産を相続すると、相続が発生し財産を相続したことを対外的に証明しなければならない場面があります。

例えば故人が金融機関に預け入れて蓄えた預貯金を相続した場合や、不動産を相続して法務局で名義変更をする『相続登記』の場面では、必ず相続を証明しなければ手続きが進みません。

このような場面で登場するのが『相続証明書』です。

ただし、一口に相続証明書といっても、現状では裁判所などの公的な機関が相続証明書という証明書類を発行してくれるわけではありません。

今回は『相続証明書』についてお話ししましょう。

1 相続証明書は3種類に大別される

相続証明書とは、相続が発生していることを対外的に証明する証明書類のことです。

では、どのようなものが相続証明書となるのかは、証明する内容によって大きく3つに分類されます。

まず「遺産分割協議を証明する書類」です。

法定相続人の間で財産の相続割合が決定すると作成するのが『遺産分割協議書』ですね。

この遺産分割協議書には、相続人全員の署名押印が必要です。

そうなると、相続人が多数の場合には押印だらけになってしまいます。

そのため、遺産分割協議書とは別に、遺産分割協議をおこなったという事実と結果を証明する『遺産分割協議証明書』という書類を作成することになります。

遺産分割協議証明書は、法的には遺産分割協議書と同じ効力を持つので、これを相続証明書と呼ぶことがあります。

一般的に相続証明書というと、この遺産分割協議証明書を指すことが多いようです。

次に「血縁上、相続が発生していることを証明する書類」です。

相続人が法定相続人であることを証明することができる書類といえば、そう、『戸籍謄本』ですね。

ただし、この場合「私が相続人だ」という事実を証明するためには、自分自身の戸籍謄本だけでは足りません。

まず被相続人の出生から死亡までの連続した記録が必要です。

もし出生の後に転籍などをしていれば、除籍謄本を含めた全ての記録が必要になります。

さらに、ほかの法定相続人全員の戸籍謄本も必要です。

つまり、相続が発生する原因となった被相続人の出生から死亡までの連続した記録と、法定相続人の全員の存在を証明することになります。

これらを全て揃えて、はじめて『相続証明書』と呼べるようになります。

最後に「遺言によって相続が発生していることの証明」です。

遺言によって相続が発生しているのですから、これは『遺言書』を指します。

遺言書は、公証人に作成してもらう『公正証書遺言書』と、公証人に遺言書の存在のみを証明してもらい内容を秘密にした『秘密証書遺言書』、公証人に頼らず自筆した『自筆証書遺言書』に分けられますが、秘密証書遺言書と自筆証書遺言書だけは家庭裁判所の検認を受けていないと法的効力がないので注意が必要です。

2 相続証明書は何通も必要になる?

冒頭で相続証明書が必要な場面をあげましたが、では被相続人の預貯金の相続手続きをすることと、不動産の相続投棄を同時にすすめていく場合は、同じ相続証明書が何通も必要になるのでしょうか?

答えはNOです。

法務局では『原本還付』という手続きがあります。

相続登記の申請時に、各相続証明書のコピーを添付して原本と相違ないことを証明しておけば、原本は還付されます。

また、戸籍謄本は相続人が多数の場合は数が多くて大変になりますが『相続関係説明図』を添付することで提出を省略することもできます。

財産を相続すると色々な手続きが発生するので、何度も同じ書類を取得しなくても、必要書類はコピーや謄本化したものの提出で足りるようになっているのです。

3 相続証明書は将来的には簡易化される?

相続証明書は、被相続人の出生から死亡に至るまでの情報、法定相続人全員の戸籍、遺産分割協議の証明など多岐にわたります。

これらを色々な手続きごとに提出するのだから、煩雑きわまりないですね。

手続きの煩雑さから、資産価値の低い不動産などは相続登記がおこなわれないまま放置されているケースも少なくありません。

実は、この煩わしい相続証明書の用意を簡易化するため、法務省は新しい『相続証明書』の制度を検討しています。

新制度では、法務局に戸籍謄本や相続関係図などの必要書類を提出すれば、被相続人と各相続人の続柄や相続割合などがすべて記載された新たな『相続証明書』を法務局が発行してくれる予定です。

2017年からの開始を目指して意見公募などをおこなっている最中とのことなので、煩雑な手続きを解消するためにも、早めに導入してもらいたい制度ですね。

4 まとめ

相続証明書についてお話ししたので、最後におさらいしておきましょう。

・相続証明書には、遺産分割協議の事実や内容を証明した『遺産分割協議証明書』や、相続関係を示す『戸籍謄本』、『遺言書』などがある

・法務局での相続登記などの手続きでは、相続証明書はコピーの提出で足り、原本還付を求めることができる

・法務省は、近い将来、法務局が相続関係や相続割合を全て証明した新しい『相続証明書』を発行する制度を実現する予定である

現在の制度では、相続証明書は「相続関係や遺産分割協議の結果を証明する書類」の総称という色合いですが、近い将来、ほかの証明書と同じように「公的機関が証明して発行する書類」になりそうですね。