不動産の遺贈を受けた場合に不動産取得税はかかるのか?
不動産を相続した場合には相続税が発生します。
これは誰でも知っている常識ですね。
では、不動産の遺贈を受けた場合はどうなるのでしょうか?
相続ではないので相続税がかからないとすれば、不動産を購入して取得した場合と同じように不動産取得税が発生するのでしょうか?
今回は、不動産の遺贈について勉強していきましょう。
遺贈ってなに?
まずは『遺贈』について学んでおきましょう。
遺贈とは遺言によって財産を贈与することです。
「遺言によって」ですから、財産の所有者が亡くなった時点で効力を発揮すると考えます。
遺贈を受ける相手は法定相続人でも、それ以外の第三者でも構いません。
また、遺贈する財産は一部を指定することも、全てを遺贈することもできます。
「○○を誰々に遺贈する」というふうに、財産と遺贈の相手を特定する方法を『特定遺贈』、財産の特定をせずに「財産のうち○割を誰々に遺贈する」とする方法を『包括遺贈』といいます。
特定遺贈は特定された一部の財産のみの遺贈を受けるため負債などの負の遺産を請け負う必要がありませんが、包括遺贈の場合は割合のみを指定されるため負の遺産も遺贈を受けることになります。
遺贈は大別すれば贈与の一つですが、財産の所有者が亡くなった時点で効力を発揮する点から相続に近い性質だといえます。
相続と大きく異なる点は「法定相続人以外の第三者にも財産を分与できる」という点でしょう。
死亡後に第三者に財産を分与する方法として利用されるのが遺贈なのです。
遺贈された場合の不動産取得税は?
不動産の遺贈を受けた場合、遺贈を受けた側の立場によって不動産取得税が課税されるか否かが変わります。
遺贈を受けた側が法定相続人の場合は、不動産取得税が非課税になります。
これは「不動産を相続した場合は不動産取得税が非課税」という定めに準じているといえるでしょう。
問題は法定相続人以外の第三者が遺贈を受けた場合です。
この場合は相続とは意を別とするので不動産取得税が課税されます。
ただし、これは特定遺贈の場合です。
法定相続人以外の第三者が包括遺贈を受けた場合は、負の遺産までも請け負うことになるため、その存在は法定相続人と何ら変わりがありません。
よって、第三者であっても不動産取得税は非課税になります。
遺贈と死因贈与の違いとは?
『死因贈与』とは、死亡の前に財産の所有者と受贈者が契約を交わして、所有者の死後に財産の譲渡を受けることです。
遺贈と大きく異なる点は、遺贈が遺言による一方的な意思表示で足りることに対して、死因贈与は相互の契約が必要であることで、契約によるところから相続とも異なります。
契約は、遺言のような文書を要するわけでもなく、口頭契約であっても認められます。
死因贈与は名称こそ『贈与』ですが、相続税の対象であり、不動産取得税も課税されます。
遺贈は登記簿を見ても判断が付きにくい?
不動産の遺贈を受けた場合、登記原因が『遺贈』となります。
ここで問題になってくるのが不動産取得税です。
不動産取得税の課税を管轄する市町村は、不動産の取得原因を確認して不動産取得税の課税を判断します。
単に『遺贈』と記載されていれば、相続人への特定遺贈なのか、第三者への特定遺贈なのか、それとも包括遺贈なのかの判断ができないのです。
市町村が誤って不動産取得税を課税するケースもあるので、自分に課税された不動産取得税が真に課税されるべきものかどうかを確認する必要があるでしょう。
まとめ
遺贈と不動産取得税についてお話ししましたが、ここでカンタンにおさらいしておきましょう。
- 遺贈は遺言によって財産を贈与すること
- 財産と受贈者を特定して遺贈することを『特定遺贈』と呼ぶ
- 法定相続人が不動産を特定遺贈された場合は不動産取得税が非課税になる
- 法定相続人以外の第三者が特定遺贈を受けた場合は不動産取得税が課税されるが、包括遺贈の場合は課税されない
- 不動産の遺贈を受けた場合、市町村が誤って不動産取得税を課税することがあるので、課税が適切かを確認する必要がある
少し難しいところですが、大切な財産について人を指定して贈与できる遺贈を利用すれば、後のトラブルを回避することができるので安心です。
特に不動産を遺贈したいと考えている場合は、遺言を作成する必要もあるので早めに専門家に相談するとよいでしょう。