相続人の行方不明だった場合について
被相続人が遺言書を残していない場合には、相続財産の帰属は遺産分割協議によって定めます。
この遺産分割協議は、相続人全員の参加が原則ですが、相続人の中に音信不通の者がいる場合、どのように対処すればよいのでしょうか。以下で解説します。
相続人に行方不明者がいる場合の遺産分割協議について
被相続人が遺言書を作成しないまま亡くなった場合、相続財産は、相続人全員が行う遺産分割協議によってその配分が決まります。
この遺産分割協議書は、相続人全員が、協議結果に同意した旨を証するために実印を押印し、その全員の印鑑証明書を添付して、初めて、各種手続きに利用できるようになります。
つまり、遺産分割協議によって相続財産の帰属を定める場合には、相続人全員の同意が必要であるということになります。
ここで、例えば、相続人の中に行方不明者がいる場合、相続人全員が揃わないわけですから、原則から言うと、遺産分割協議は行えないことになります。
しかし、そのような場合にでも、一定の手続きを経ることによって遺産分割協議が可能になります。
まず、行方不明者の捜索が必要
相続人に行方不明者がいる場合には、まず、行方不明者の戸籍や戸籍の附票、住民票などを取得し、その方の住所を特定します。
住所が特定できたら、手紙を書くとか、その住所の近所の方に対して聞き取りを行うなどして、その方を探します。
この方法で、音信不通となっている相続人と連絡が取れれば、そこで、相続人行方不明の問題は解決します。
なお、音信不通となっている相続人が病気等で外出等が不可能な場合には、電話と手紙のやり取りで協議を行うことも可能です。
また、その方が、認知症等で物事を理解する能力を欠く場合には、成年後見人を選任すれば、成年後見人を代理人として遺産分割協議を行うことができます。
不在者財産管理人制度の利用について
それらの方法でも、行方不明の相続人が見つからない場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を請求します。
調査の結果、不在者財産管理人の選任の必要性が認められた場合には、家庭裁判所は、不在者財産管理人の選任を行います。
そして、この場合には、選任された不在者財産管理人が、行方不明の相続人に代わって遺産分割協議に参加できるので、それによって遺産配分を定めることができます。
失踪宣告制度の利用について
長期間、行方が分からなくなっている相続人がいる場合には、失踪宣告制度の利用が考えられます。
これは、利害関係人の申請により、家庭裁判所が失踪宣告の審判を行うことで、行方不明となった時から7年を経過した時点で、行方不明者が死亡したものと見做すものです。
なお、この制度を利用して行方不明者となっている相続人が死亡したとみなされる時点が、被相続人の死亡より先となるケースがあります。
この場合には、代襲相続となりますので、当該行方不明者に子又は孫がいる場合には、その者が、当該行方不明者の代わりに遺産分割協議に参加することになります。