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相続放棄の具体的な方法を教えて!

人には様々な事情で相続放棄を考えることがあります。

借金などのマイナスの財産を相続したくない、遺産相続争いを回避したい…

しかし、単に「相続はしません」といって財産を手にしないだけでは相続を放棄したことにはなりません。

今回は、相続放棄の具体的な方法や必要書類などについて、主に東京家庭裁判所で手続きをすることを前提にお話しします。

1 相続放棄は『家事事件』である

裁判所でおこなう審判や調停などの手続きは、すべて『事件』と呼ばれます。

そして、家庭裁判所で取り扱う相続や離婚に関する事件のことを『家事事件』と呼びます。

相続放棄も家事事件のひとつなので、家庭裁判所で家事事件の申し立て手続きをすることになります。

『事件』と呼ぶと、殺人や強盗のような刑事事件をイメージしてしまいがちですが、相続も事件と呼ぶことは裁判所の手続きに慣れていないと戸惑うかもしれませんね。

財産の相続を考える場合には、

・不動産や預貯金などのプラスの財産を相続する一方で、故人の借金などのマイナスの財産の義務も負う『単純承認』

・借金だけでなく不動産や預貯金などのプラスの財産までも一切の財産相続を放棄する『相続放棄』

・プラスの財産からマイナスの財産を清算した結果の余剰分を相続する『限定承認』

を選択することになります。

単純承認の場合は特段の手続きはありませんが、相続放棄と限定承認については家庭裁判所で家事事件として申し立てをする必要があります。

2 相続放棄の手続き方法

相続放棄の手続きを「いつ、どこで、誰が、どのようにして」という順で説明していきましょう。

まずは「いつ」です。

相続放棄の申し立ては、自身に相続の開始があったことを知った時から3か月以内にしなければなりません。

法定相続人は被相続人の子ども、親、兄弟姉妹などですから、よほどの理由がなければ亡くなったことをすぐに知るでしょうから、概ね「被相続人が亡くなった日から3か月以内」と考えておけばよいでしょう。

「どこで」は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

東京都内では

・東京23区内、三宅村、御蔵島村の場合は東京家庭裁判所の本庁

・八丈町、青ヶ島村は東京家庭裁判所八丈島出張所

・大島町、利島村、新島村、神津島村は東京家庭裁判所伊豆大島出張所

・上記以外の市町村では東京家庭裁判所立川支部

が取り扱います。

東京23区は本庁で、多摩地区の市は立川支部で、三宅島と御蔵島を除く離島は各出張所で、と覚えておけばよいでしょう。

「だれが」というと相続人です。

ただし、相続人が未成年や成年後見人である場合はその法定代理人になります。

必ずしも相続人本人が手続きをする必要はなく、委任を受けた弁護士や司法書士などが代理人として手続きを申し立てることもできます。

「どのように」ですが、申し立てに必要な書類を揃える必要があります。

相続放棄に必要な申請書類は

・相続放棄申述書

・申述人の戸籍謄本および被相続人の除籍謄本、住民票の除票等

です。

申し立ての際には

・収入印紙…申立人1人につき800円

・連絡用の郵便切手…各家庭裁判所によって金額が異なるが概ね

1,000円以内(東京家庭裁判所の場合は82円×4枚、10円×4枚 合計368円)が必要になります。

3 相続放棄を主張するためには?

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合『相続放棄申述受理通知書』が送られてきます。

相続放棄を証明するものとしてはこの通知書で十分でしょう。

ただし、法務局で不動産の名義を書き換える場合などでは『相続放棄申述受理証明書』の提出が求められます。

金融機関によっては、被相続人の口座を解約する場合などに提出を求められることもあるようです。

相続放棄申述受理証明書は、相続放棄申述受理通知書と同封されている申請書で発行を請求できます。

4 「あの人は相続放棄したの?」を調べる方法がある!

被相続人に貸金や売掛金がある債権者にとって、相続人が相続放棄をしたのかは重要な問題になります。

特に、相続放棄によって完全に債務まで放棄されたのか、限定承認で可能な範囲の債権を回収できるのかは切実な問題でしょう。

また、遺産分割協議をすすめる中で相続放棄を検討している親族がいれば、ほかの相続人は「あの人は相続放棄をしたのかな?」と確認したくなる場面もあるでしょう。

このような場合には、相続人が相続放棄をしたのかどうかを家庭裁判所に照会することができます。

相続放棄照会は、家庭裁判所に申請することで可能です。

相続人であれば誰でも照会することができるほか、債権者などの被相続人の利害関係者でも照会することができます。

照会費用はかからないし、照会書の書式は裁判所のホームページからダウンロードして必要書類を添付するだけなので、意外と難しくない手続きで照会が可能です。

5 まとめ

相続放棄の手続きについてお話ししました。

今回の内容をカンタンにまとめてみましょう。

・相続放棄は、被相続人が亡くなって3か月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に相続人が申し立てる必要がある

・申し立てには『相続放棄申述書』の提出が必要である

・相続放棄申述書を提出すると、家庭裁判所から『相続放棄申述受理通知書』が郵送される

・相続放棄申述受理通知書で足りない証明は『相続放棄申述受理証明書』の発行で対応できる

・相続放棄の事実の有無は、相続人または利害関係者の場合、家庭裁判所に照会が可能である

相続放棄の手続きは、基本的にはどの家庭裁判所でも同じですが、申し立て時に必要な切手の額面などが異なります。

手続きの際には、管轄の家庭裁判所のホームページで調べるか、問い合わせてから手続きをすすめると良いでしょう。