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生前贈与の土地について

相続税の節税又は遺産を巡るトラブルを回避する方法として、居住用土地のような高額な財産を、特定の相続人が被相続人から生前に贈与を受けておく方法があります。

そこで、以下では、土地を生前贈与によって受け取る時の流れとその注意点について解説します。

土地の譲渡には登記手続きが必要

法律上は、財産の贈与は、意思表示のみで成立します。

例えば、AさんがBさんに土地を譲る場合、AさんがBさんに口頭又は書面で、「土地を譲ります」という意思を表明すれば、それだけでAさんの土地の所有権はBさんに移ります。

しかし、口頭の約束だけであれば、後からAさんがBさんに土地を譲った覚えがないから返して欲しいと言ってきた場合でも、Bさんは自分の所有権を主張できません。

また、書面による譲渡の場合も、AさんがCさんにも同じ土地を書面で譲渡していた場合には、BさんとCさんとどちらが所有者であるかはっきりしません。

そこで、土地を譲渡した場合には、不動産登記簿上の名義人を譲渡人から譲受人に変更する移転登記を行うのが一般的です。

上記の例で、登記名義がAさんからBさんに変更されていれば、譲渡後にAさんが譲った覚えがないと言っても、別に所有権を主張するCさんが出てきても、Bさんは安泰です。

土地の生前贈与を行う場合の主な手続きは、この登記名義人を変更する所有権移転登記の手続きとなります。

土地の所有権移転登記の手続きについて

土地の所有権移転登記のためには、まず、譲渡契約書を作成します。

譲渡契約書の雛形は、文房具店等で販売もしていますが、インターネットからダウンロードによって取得することもできるので、これを利用することが簡便です。

なお、譲渡契約書には、譲渡人及び譲受人が記名押印を行いますが、その際、譲渡人は、実印を用いる必要があります。

譲渡契約書の作成が終了したら、契約書に印紙税分の印紙を貼付します。

次に、以下の書面を用意します。
1. 所有権移転登記申請書
2. 譲受人の住民票
3. 譲渡人の印鑑証明書
4. 譲渡に係る土地の固定資産税評価証明書
5. 登録免許税額分の収入印紙

所有権移転申請書は、法務局のホームページからダウンロードによって取得することができますので、それを利用します。

また、登記申請書の書き方も、法務局がホームページで公開していますので、それを参考にしながら、申請書を作成します。

最後に、上記の必要書面を揃え、登記申請書を一番上にして、譲渡に係る土地の所在場所を管轄する登記所の窓口に提出します。

なお、この手続きを登記の専門家である司法書士に依頼することもできます。

その際には、上記の書面に加え、委任状が必要になります。

また、司法書士に対して手数料である司法書士報酬を支払う必要もあります。

土地の生前贈与をする際の注意点について

原則として、60歳以上の父母又は祖父母が、20歳以上の子又は孫に対して財産贈与をする場合、相続時精算課税制度を利用することができます。

この制度は、贈与時点で発生する贈与税につては、2,500万円まで非課税、2,500万円を超える部分については一律20%の税率で課税します。

そして、贈与者に相続が開始した場合に、相続税の課税価額に、相続時精算課税制度に係る生前贈与財産の価額を含めて相続税額を計算する、というものです。

また、婚姻期間が20年以上の一定の夫婦間で、居住用の不動産を譲渡した場合には、贈与税の課税の際に、基礎控除額110万円に加え、最高で2,000万円の控除額が利用できます。

これらの贈与税の軽減措置を受ける場合には、贈与があった年の翌年の2月1日から3月15日までの間に、生前贈与に係る贈与税の確定申告を行う必要があります。

そして、申告の際に、税額軽減措置を受けるための一定の手続きを合わせて行います。

申告期間に、生前贈与に係る贈与税の確定申告を行わない場合には、要件に該当する場合でも、上記の税額軽減措置は受けることができませんので、このことには十分に気を付けなくてはなりません。