相続した遺産を寄付したい場合はどうすればいいの?
世の中には数多くのボランティア団体などがあり、そのほとんどが非営利活動を目的として設置されています。
事業の主な収入源は公的支援やバックアップしてくれる企業などからの支援ですが、それでも十分な活動資金が確保できない団体が多く存在しているのが現実です。
また、近年では、自分の財産を子どもに相続させたくないと考える人も増えています。
元々、欧米では遺産をボランティア団体や自身の母校などに寄付する風習がありましたが、日本では家系を重んじる風習からあまり浸透していない考え方でした。
ところが、日本古来からの家系主義が薄れてきた現代。
単に財産を相続させることはかえって子どものためにならないという考えからボランティア団体などの団体に寄付をするケースや、親が遺した遺産を慈善事業に活用して欲しいと遺産を寄付するケースも増えています。
今回は、遺産の寄付について勉強してみましょう。
相続を受けた遺産を認定NPO法人に寄付すると?
相続を受けた遺産を寄付することには大きなメリットがあります。
相続財産から『認定NPO法人』に対して一定期間内に寄付した場合、寄付分は相続税が非課税になるのです。
認定NPO法人とは、所轄庁が認定した高い公益性がある特定非営利活動法人のこと。
任意団体やNPO法人は数多く設立されていますが、より厳格で客観的な基準によって認定されているのが『認定NPO法人』です。
「一定期間内の寄付」とは、相続税の申告期限内を指します。
つまり、相続が発生してから10ヶ月以内に寄付が完了してその領収書の交付を受けていることが必要になります。
さて、こう聞くと「相続税を節税するために遺産を目減りさせるのもなぁ」と難色を示す声が聞こえそうですが、メリットは相続税の非課税だけではありません。
認定NPO法人に寄付した場合、その年の所得税や住民税などにも『寄付金控除』が適用される、高い税制優遇を受けられるのです。
そもそも、認定NPO法人制度自体が高い優遇税制を用いることで寄付を推進することを目的とした制度であるため「単に寄付金分が控除されるだけ」ではない優遇措置が採用されています。
自分の死後に財産を寄付するベストな方法は?
自分の死後、遺産をボランティア団体に寄付したいと考えている場合、ボランティア団体は法定相続人ではないので、方法は『遺贈』もしくは『死因贈与』に限られてくるでしょう。
遺贈の場合、遺言書に寄付の内容を記すことになりますが、大きな欠点が2つあります。
まずは、遺言書に書かれた内容をボランティア団体側が断った場合です。
遺贈は一方的な意思表示なので、受贈側が断った場合はその遺志が果たされないことになります。
もう一点は、遺言書の内容を知った相続人の抗議です。
何も知らされずに「遺産を全てボランティア団体に寄付する」と書かれていれば、相続人の怒りはボランティア団体に向けられてしまうおそれもあります。
無用な紛争を避けるためにも、遺贈はオススメできません。
こうなると、ベストなのは『死因贈与』です。
死因贈与であれば生前に双方の合意契約によって財産が譲渡されるので、遺贈のように受贈側が断ることはありません。
また、生前贈与であれば最大で50%もの贈与税が課税されますが、死因贈与であればかなり軽減されることになります。
死因贈与の場合、不動産を贈与すると不動産取得税が課税されるというデメリットがありますが、そのほかに目立ったデメリットはありません。
贈与する財産を選定すれば、デメリットは全くないといえるでしょう。
まとめ
遺産の寄付について紹介しましたが、ここで少しおさらいです。
- 相続を受けた遺産を認定NPO法人に寄付した場合、寄付分は相続税が課税されず、さらにその年の所得税や住民税が控除される優遇税制を受けられる
- 自身の財産を死後に寄付する場合、一方的な意思表示である『遺贈』よりも双方の合意契約である『死因贈与』のほうが好ましい
死後の遺産を寄付することについて紹介しましたが、生前贈与した場合、死後の準確定申告でも控除を受けることがでくるので、メリットがないわけでもありません。
もし、遺贈や死因贈与で後に法定相続人が遺留分の侵害を主張するような事態になるくらいなら、贈与税が課税されることを覚悟のうえで周囲の合意を取り付けて生前贈与をするほうが賢明かもしれませんね。