相続に関する民法の規定について
現在の日本の相続に関して、非常に大きな影響を与えているのが、相続に関する民法の規定です。
よって、相続に関わる方にとっては、相続に関する民法の規定を知っておくことは非常に重要です。
そこで、以下では、それについて解説します。
相続に関する裁判所の判断は民法の規定による
被相続人が残した相続財産の配分を相続人の間でどのように決めるかは、被相続人の遺言又は相続人間の遺産分割協議によって定めるのが原則です。
しかし、遺言書がなく、遺産分割協議も整わない場合には、最終的には裁判でそれが決まります。そのときに基準となるのが、民法による相続財産の分割方法です。
遺産トラブルで裁判所に持ち込まれた場合には、特殊な事情がない限りは、民法で定める方法に従って相続人に遺産分割を求める審判がなされます。
民法で定める法定相続人について
民法で規定する相続権を有する相続人を定めるルールは、以下のようになります。
(1)被相続人の配偶者は常に相続人となる
(2)被相続人に子又はその代襲者があれば、その者は第1順位の相続人となる
(3)被相続人に直系尊属(父母や祖父母等)があれば、その者は第2順位の相続人となる
(4)被相続人に兄弟姉妹があれば、その者は第3順位の相続人となる
なお、被相続人の死亡以前にその子が死亡しており、死亡した子にさらに子がある場合には、被相続人の子の子が、被相続人の子に代わって相続人となり、これを代襲といいます。
また、先順位の相続人がいる場合には、後順位の相続人は被相続人の相続人となることはできません。
例えば、被相続人に子がいる場合は、被相続人の直系尊属及び兄弟姉妹は相続人になれないし、被相続人に子はないが直系尊属がある場合には、兄弟姉妹は相続人にはなれません。
配偶者には順位がないので、被相続人が独身の場合を除いて、配偶者は常に相続人となります。
そして、配偶者と上記の(2)から(4)に定まる相続人がいる場合には、配偶者とその定めによる相続人は同順位の相続人となります。
この規定は条文でいうと、民法第886条から第890条で規定されています。
法定相続分について
民法では、法定相続分を規定しています。
法定相続分とは、法律で定める相続財産の相続人間の配分割合のことで、相続人間の遺産分割協議や家庭裁判所における遺産分割調停・審判において重要な役割を果たします。
この法定相続分は、以下のように定められています。
(1)配偶者と子又はその代襲者が相続人となる場合 配偶者1/2・子又はその代襲者1/2
(2)配偶者と直系尊属が相続人となる場合 配偶者2/3・直系尊属1/3
(3)配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合 配偶者3/4・兄弟姉妹1/4
なお、子、直系尊属、兄弟姉妹が複数人存在する場合には、その相続分は相等しいもの(人数で均等割した取分)となります。
この規定は、条文でいうと、民法第900条で定められています。
相続放棄について
相続放棄とは、法定相続人がその相続権を放棄することを言い、相続放棄があるとその相続人は初めから相続人でなかったものと見做されます。
従って、被相続人の相続人が配偶者と子1人である場合に、子が相続放棄をすると、配偶者及び第2順位である直系尊属が相続人となります。
さらに、この例で、被相続人の直系尊属が被相続人の母のみで、この母も相続放棄をしたとすると、相続人は配偶者と第3順位である兄弟姉妹となります。
なお、相続放棄は、相続人が相続の開始を知った日から3カ月以内に、家庭裁判所に対する申述によって行わなくてはなりません。
相続放棄に関しては、民法第915条及び第938条から第940条で規定しています。