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平成27年の相続税改正の概要とは?

平成27年から相続税の一部が改正されて、一部では増税、別の部分では減税の措置が取られることになりました。

主な改正点は4つですが「消費税増税○%!」のように生活に身近でない分だけ、世間での認知度も低いように見受けられます。

人が一生のうちに相続税に触れる機会はほんの数回ですから無理もありませんが、いざ、自分が相続税と関わる機会に困らないように、事前にしっかり勉強しておく必要があるでしょう。

今回は、平成27年の相続税の改正点についてお話しします。

1 基礎控除額が引き下げられた

平成27年の相続税改正のうち、メディアで最も大きく取り上げられたのが「基礎控除額の引き下げ」です。

改正前までの基礎控除額の計算は5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)でしたが、今回の改正で3,000万円+(600万円×法定相続人の数に引き下げられました。

計算式だけではピンとこないので、例を挙げてみましょう。

一家の長である父親が亡くなり、母親と子ども1人が5,000万円の財産を相続するとします。

これまでの基礎控除額の計算式に従うと5,000万円+(1,000万円×2人)=7,000万円となり、基礎控除額が相続財産額を上回るため、相続税が発生しませんでした。

これを改正後の計算式に当てはめてみると3,000万円+(600万円×2人)=4,200万円となり、相続財産額が基礎控除額を800万円ほど上回るので相続税が発生するようになったのです。

これまでの制度だと、相続が発生しても相続税の納税対象になっていたのは全体の4%程度でしたが、基礎控除額の引き下げによって6%程度まで増加すると見込まれています。

あまり嬉しくない意味で相続税が身近になった、ということですね。

2 税率が引き上げられた

これまで、相続税の税率は6段階に区分されていましたが、新たに8段階に細分化されました。

各法定相続人の取得金額が1億円以下の場合は税率に変更がありませんが、

1億円超2億円以下で40%

2億円超3億円以下で45%

3億円超6億円以下で50%

6億円超で55%

に引き上げられました。

概ね5%の引き上げですが、6億円超になると55%という世界一高い相続税率が誕生してしまいました。

6億円を超えると5%でも最低3,000万円、合計3億3,000万円を相続税として納税しなくてはならない計算になります。

これもあまり嬉しい改正ではありませんね。

3 『未成年者控除』と『障害者控除』が引き上げられた

未成年者控除とは、相続人が未成年者の場合、20歳になるまでの間は一定額が控除されるというもの。

これまでの制度だと1年につき6万円であったのに対し、改正後は1年につき10万円に引き上げられました。

障害者控除とは、相続人が障害者の場合、85歳までの間は一定額が控除されるというものです。

従来は1年につき6万円(特別障害者は12万円)であったのに対して、改正後は1年につき10万円(特別障害者は20万円)が控除されることになりました。

引き上げ額はいずれも4万円で、基礎控除額の引き下げや税率の引き上げと比べると微々たるものに感じられます。

しかし、相続人の年齢が低ければ低いほど控除を受けられる期間が長くなるので「控除を受けられる期間×4万円の控除額引き上げ」だと思えば嬉しい措置でしょう。

4 小規模宅地等の特例の面積拡大

小規模宅地等の特例とは、被相続人または被相続人と生計をともにしていた親族の居住用・事業用の宅地について、評価額を最大80%も減額できるという制度です。

これまで、対象となる住居用の宅地面積が限度面積240㎡であったのに対して、改正後はこれが限度面積330㎡に引き上げられました。

また、改正前は居住用宅地240㎡、事業用宅地400㎡のうち、合計で400㎡が特例として適用されていましたが、今回の改正で居住用宅地330㎡、事業用宅地400㎡、合計で730㎡が特例を受けることになりました。

小規模宅地等の特例の改正は、単に面積が引き上げられて一体なんの得があるの?と感じるかもしれません。

しかし、この改正点こそが最大の節税効果を生む可能性があるのです。

例えば、被相続人が居住している住宅が評価額5,000万円だったとして、そのほかに、評価額1億円の住宅も所有していたとします。

評価額1億円の住宅の宅地面積が330㎡の場合、これまでの制度だと小規模宅地等の特例を受けるには面積がオーバーしていました。

ところが、改正によって評価額1億円の住宅も小規模宅地の特例を受けることが可能になりました。

そのまま被相続人が死亡まで評価額5,000万円の住宅に居住していた場合は5,000万円-80%=1,000万円となりますね。

ところが、評価額1億円の住宅に引っ越しておけば1億円-80%=2,000万円になります。

この節税効果を比較すると5,000万円-1,000万円=4,000万円の節税1億円-2,000万円=8,000万円の節税となるわけですから、どちらが節税効果が高いのかは一目瞭然ですね。

この改正点を活用するには、資産価値や宅地の面積などを勘案して、土地単価の高い住宅に引っ越すなどの事前準備が必要になることを覚えておきましょう。

5 まとめ

平成27年の相続税改正についてご紹介しました。

基礎控除額の引き下げなどで新たに相続税が発生することになる方が増える一方で、未成年者控除や障害者控除の控除額引き上げ、小規模宅地等の特例の面積拡大によって節税が見込める方も増えそうです。

改正によって相続税が発生する可能性がある方は、事前に税理士などの専門家に相談しておいて、節税対策を考える必要があるでしょう。

小規模宅地等の特例を活用する場合も、移住する不動産の選定など、やはり専門家の意見を求めたほうがよいケースが増えるので、しっかりと事前準備をしておきましょう。