離婚後も財産を相続できる?
昨今、離婚する夫婦が増加しているため「離婚後も財産を相続できるのはないか?」という疑問も高まっています。
現実的な結論として、離婚をすると夫婦関係が解消されるため相続財産を受け取る権利は消失します。
いくら元夫婦とはいえ、離婚をすれば他人です。
他人には財産を相続する権利はないので、当然といえば当然ですよね。
ところが、この夫婦に子どもがいればちょっと話は変わってきます。
夫婦は離婚をすれば他人になりますが、親が離婚しても親子関係は変わりません。
しかも、離婚後に別のパートナーと再婚して、さらにそこに子どもがいれば、話は複雑化していきますね。
今回は、離婚後の相続についてお話しします。
ちょっと言い方が変ですが、誰しも離婚という人生のターニングポイントを迎える可能性はゼロではないので、他人事と思わずにご覧ください。
1 元配偶者には相続権がない!
念を押すようですが、どれだけ長い婚姻期間があったとしても、離婚をしてしまえば夫婦は他人同士。
元配偶者は他人の関係となり、相続の権利は一切ありません。
ここには一切の例外はありません。
もし「自分の死後、元配偶者に対して財産を譲渡したい」と考える場合は、遺言を作成するか遺贈をすることになるでしょう。
2 元配偶者との間に生まれた子どもがいる場合は?
夫婦が離婚して、子どもの親権が元配偶者側に移ったとしても、親権がないというだけで自分の子どもであることに変わりはありません。
子どもは、父母どちらからみても第一順位の法定相続人となります。
例えば、夫のAさん、妻のBさんという夫婦がいたとします。
AさんとBさんの間には、長男Cさんがいました。
AさんとBさんは離婚し、Cさんの親権者はBさんに決まりました。
Aさんには1億円の財産がありましたが、Aさんが死亡してもAさんの財産をBさんは相続できません。
なぜならAさんとBさんは離婚した時点で『他人』だからです。
ところが、長男のCさんはAさんから見てもBさんからみても子どもであり法定相続人です。
Cさんは、Aさんの財産、Bさんの財産、どちらも相続する権利を得ることになるのです。
親子関係は、たとえ両親の離婚後に何十年経ってしまっていても解消されることはありません。
子どもの立場からすれば、両親の離婚後、何十年も会ったことがなかった父親が死亡して「財産の相続権がある」という連絡を受けることもあるわけです。
3 再婚後、前妻に引き取られた子どもに相続させない方法は?
離婚後に別のパートナーと再婚し、その間に子どもが生まれたとしましょう。
元配偶者や子どもに対して養育費や財産分与、場合によっては慰謝料などを支払って、婚姻中の責任を果たしていれば「その後の生活によって得た財産の相続はさせたくない」と思っても当然でしょう。
最も多いのは「前妻に引き取られた子どもに財産を相続させたくない」というケースです。
この場合も、回避する方法は遺言を活用するのがベストです。
基本的に優先されるのは遺言であり「後妻とその子どもに財産を相続させる」という遺言を遺しておけば、相続人を再婚後の後妻に指定することができるわけです。
ここで注意したいのが『遺留分』の存在。
遺留分とは「最低限相続できる相続割合」のことであり、法定相続人である以上は前妻との間の子どもにも相続権があります。
前妻との子どもから『遺留分減殺請求』がなされれば、遺言が優先されるといっても財産の一部を取られてしまうおそれは残ってしまいます。
4 まとめ
今回は離婚後の相続についてお話ししました。
最後にカンタンにおさらいしておきましょう。
・離婚した場合、元配偶者には相続権がなくなるが、その子どもとの親子関係は解消されないので、子どもには相続権が残る
・元配偶者に財産を相続させたい、もしくは元配偶者との間の子どもに相続させたくないなどのケースでは、遺言を作成するとよい
・基本的に遺言の内容が優先されるが、法定相続人が持つ『遺留分』の権利は無視されないので、一部の財産を取られるおそれがある
冒頭でも触れましたが、離婚は決して珍しいことではありません。
もし自分が離婚した後に再婚すれば必ず直面する問題ですから、予備知識的に覚えておくべきでしょう。