権利収入の相続税について
ネットワークの権利収入を受け取る権利(会員権)は、その権利を所有している方が亡くなった場合、相続人に承継させることができます。
では、その場合、当該権利は、相続税の課税対象となるのでしょうか。以下で解説します。
ネットワークの会員権の承継に相続税はかからない
ネットワーク収入を受ける権利(会員権)の承継には、相続税は課税されません。
それは、その会員権自体には、何の財産価値もないからです。
ただし、その会員権を活用して、その相続人が実際に権利収入を得た場合には、相続税ではなく、所得税(雑所得や事業所得)が課税されますから、確定申告が必要です。
ネットワークビジネスとは
ネットワーク・ビジネスとは、人から人へ口コミで流通を作っていくビジネスです。
例えば、X社が主催するネットワークの会員であるAさんが、X社の製品(例えば、化粧品)が大変よいものであることを説明して、Bさんをそのネットの会員にさせます。
そして、会員であるBさんがX社製の化粧品を購入した場合、売上代金の数%が、Aさんに紹介料として支払われ、これが権利収入に該当します。
Aさんが、Bさんだけでなく、勧誘によってCさんDさんEさんを会員とした場合には、CさんDさんEさんがX社の製品を購入するたび、Aさんに権利収入が入ります。
そうすると、Aさんは自分が勧誘して会員とさせた人がX社製品を購入するたびに、その代金の数%の権利収入を得るわけですが、その収入を受ける権利が上記の会員権となります。
なお、日本でもっとも有名なネットワークビジネスは、化粧品や鍋などの販売ネットワークを形成している「アムウェイ」です。
無体財産権に関する相続税の課税について
相続税評価の基本を定めた財産評価基本通達の第7章では、無体財産権の相続税評価について定めています。
無体財産権とは、物理的実体を持たないものであるにもかかわらず、相続税の課税対象財産となるもののことで、同通達において、以下のものについて定められています。
(1) 特許権及びその実施権
(2) 実用新案登録権、意匠権及びそれらの実施権
(3) 商標権及びその使用権
(4) 著作権、出版権、著作隣接権
(5) 鉱業権及び租鉱権
(6) 採石権
(7) 電話加入権
(8) 漁業権
(9) 営業権
この中で、ネットワークビジネスの権利収入は、(9)の営業権に近いものとなります。
しかし、相続税の対象となる営業権は、起業買収の際、買収される企業の純資産額評価額と買収価額の差額と定義されるので、ネットワークビジネス権利収入とは全く異なります。
したがって、現在のところ、ネットワーク権利収入を受ける権利を承継した場合に、それを相続税の課税対象とする法令の根拠がありません。
なお、今後、法令が整備されて、その権利の承継に対して相続税が課税されるようになる可能性はあります。