相続対策にも使える!不動産信託と登記について
はじめに
最近、民事信託や家族信託という言葉を目にする機会が増えました。
皆さんは、信託とは何かご存知でしょうか?
信託銀行のような言葉は、以前からよく目にしましたが、信託の意味をよく知らない方も多いのではないでしょうか。
今回は、信託の概要、不動産についての信託とそのための登記について解説していきます!
信託とは
信託とは、不動産や預貯金を持つ人(委託者と呼びます)が遺言や契約によって、信頼できる人(受託者と呼びます)に資産を移転し、遺言や契約で定めた一定の目的(信託目的と呼びます)に従ってその資産を管理・処分して、管理・処分の利益を特定の人(受益者と呼びます)が受け取る法律関係のことです。
委託者が受益者を兼ねることも可能です。
信託の対象とされた財産は、委託者の所有を離れ受託者の所有になります。
ただし、信託目的での所有であるため、受託者の固有資産とは分別して管理されます。
不動産の信託と登記
不動産の信託の分かりやすい例として、土地や建物等の不動産を所有する委託者が、不動産賃貸のスキルを持つ受託者に対して不動産の所有権を移転して、受託者がその不動産を賃貸して賃料収入を得るようなケースがあります。
賃料収入は、委託者や委託者が指定した受益者が受け取ります。
このときの登記手続としては、委託者から受託者への所有権移転登記と信託財産であることを公示するための信託登記を併せてすることになります。
信託登記をすると、信託の内容(委託者、受託者、受益者、信託目的、信託財産の管理方法等)が登記簿に記録され、第三者のその内容を確認することができます。
また、形式的に不動産の所有権が受託者に移転しますが、あくまでも信託目的であって実質的な財産の移転ではないので、贈与税や不動産取得税の課税はありません。
信託の利用場面
不動産の信託は、契約等での内容の定め方によって様々な場面での利用が想定されます。
代表的な利用方法のいくつかを以下に紹介します。
相続対策
「子供のいない夫婦の夫が不動産を所有しており、夫の意思として自分の死亡後は妻に不動産を相続させたいが、将来における妻の死亡時に妻方の親族に相続されるのは嫌で、夫婦双方が亡くなった後は夫の弟に不動産を引き継いで欲しいと考えている」
このようなケースでは、夫を委託者、夫の弟を受託者として信託契約をし、妻が健在の間は妻を受益者として、妻の死亡後の信託財産の帰属先として夫の弟を指定することで希望通りの財産の承継が可能です。
後見制度の代用
「不動産を所有する高齢の夫が認知症の妻と所有不動産に住んでおり、自分の死後又は自分の判断能力も衰えてきたときには、自宅不動産を売却して施設の入居資金にしたいと考えている」
このようなケースでは、夫を委託者、夫婦の子供等の信頼できる親族を受託者として信託契約をし、当面は自分自身を受益者に指定して、委託者の死亡や委託者の診断結果等を条件とした処分権限を受託者に与えておくことで、成年後見制度の代用とすることも可能です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
上述した例示は、あくまでも信託活用事例のほんの一部です。
信託は遺言や契約の内容として、かなり自由度の高い設計が可能であり、活用場面も多岐に渡ります。
そんな「信託」という仕組みは、今後益々活用の幅が広がっていくことが予想されます。
最後まで読んで頂きありがとうございました。