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親が連帯保証人になっていた…相続放棄できる?

財産の相続が発生した場合、親(被相続人)が誰かの借金の保証人になっていたらどうなるのでしょうか?

相続における『財産』とは、プラスの財産はもちろん、マイナスの財産も含んで考えることになります。

つまり「借金も相続することになる!」ということなんです。

土地建物などの不動産や預貯金はありがたく相続したいのは当然ですが、借金や未払金の責任なんて相続したくありませんよね。

そうすると「プラスの財産は相続するけど、マイナスの財産は相続しない!」と考えるでしょう。

ここで頭に浮かぶのが『相続放棄』です。

では、もし被相続人である親が他人の借金の連帯保証人になっていればどうなるのでしょうか?

連帯保証人の責任も相続することになるんでしょうか?

今回は相続放棄に触れながら「連帯保証人の相続放棄」について考えていきましょう。

1 相続放棄は『一部のみ』の放棄ができない?!

相続放棄を考える中で最も苦しむところが「財産の一部のみを相続放棄する」ことができない点です。

もし可能なら、プラスの財産はしてマイナスの財産は「私は知りません」で通してみたいものですが、それは不可能。

相続放棄は、全ての相続権を放棄する手続きなんです。

もし自分がお金の貸主だとして、知人に1億円を貸し付けたとします。

その知人が1億円を使わずに死亡した場合、一部の相続放棄を許してしまえば、相続人の手元にある1億円はプラスの財産として相続されて、マイナスの財産である1億円の借入は放棄されて自分は貸し倒れになってしまうという理不尽な事態になるんですから、一部のみの相続放棄ができないのは道理にかなっていますよね。

2 連帯保証人の責任は相続で引き継がれる?!

そもそも『連帯保証人』って何でしょうか?

借金は、貸主(『債権者』と呼びます)と借主(こちらは『債務者』です)の間で『金銭消費貸借契約』を結び、債権者が債務者に対してお金を貸し付けることをいいます。

そして、金銭消費貸借契約の中で、債務者の弁済能力を保証するために別の契約を結びます。

これが『保証契約』です。

保証契約では、万が一でも債務者が借金を返済できなくなった場合にその責任を連帯して負うことを約束します。

この立場にある人のことを『連帯保証人』と呼びます。

保証契約は、あくまでも債権者と連帯保証人の間で結ばれた契約であり、債権者と債務者の間で結ばれた金銭消費貸借契約とは全く別の契約になります。

では、連帯保証人の責任は相続によって引き継がれるのでしょうか?

説明したとおり、連帯保証人の契約は債務者と連帯保証人の間で結ばれた契約なので、これはマイナスの財産として相続の対象になります。

つまり、被相続人が誰かの金銭消費対象契約にまつわる連帯保証人になっていた場合、連帯保証人の責任は相続人に引き継がれることになるのです。

3 親の借金の連帯保証人になっていた場合は?

連帯保証人の責任は相続されることは分かりましたが、では、被相続人である親の借金に対して、相続人である子が連帯保証人になっていた場合はどうなるのでしょうか?

この問題は、相続と切り離して考えたほうが分かりやすいかも知れません。

債務者は被相続人である親で、相続人である子は親の借金の責任を連帯して保証することを債権者と契約しているのですから、相続人は初めから被相続人の借金について責任を負っていることになります。

となると、被相続人である親の死亡によって連帯保証人としての責任が発生することになり、その責任は相続放棄によっても回避することができません。

このような場合、債権者は連帯保証人である相続人に対して借金の返済を求めることになるので、連帯保証人において返済が不能な場合は、相続放棄ではなく自らが主体の『債務整理』や『自己破産』によって責任を回避するほかに方法がないことになります。

4 まとめ

今回は連帯保証人の責任に関する相続放棄についてお話ししました。

最後にカンタンにおさらいしておきます。

・被相続人が誰かの借金の連帯保証人になっていた場合、その責任は相続人に引き継がれる

・被相続人の連帯保証人としての責任は相続放棄によって回避できるが、不動産や預貯金などのプラスの財産も含めた全ての財産の相続を放棄するこ

とになる

・相続人が被相続人の借金の連帯保証人になっている場合は、被相続人の死亡に関係なく相続人に連帯保証人としての責任があり、相続放棄では責任を回避できないため債務整理や自己破産をする必要がある

相続する側からすれば連帯保証人の責任はマイナスの財産かもしれませんが、債権者と故人の間にしてみれば信用関係です。

カンタンに相続放棄する、債務整理などをするということばかり考えずに、相続して故人の財産を整理し、債権者と故人の間に築かれた信用を全うすることも、相続人の責任だと言えるでしょう。