不動産にまつわる相続トラブルについて。トラブルの原因と対策
相続のトラブルで親族間で骨肉の争いになったといった話をテレビ等で見たことがある方は多いと思います。
また、そういった経験談を身近で聞いたり、ご自身が当事者になったという方もいるかもしれません。
今回は、様々な遺産の中でも相続トラブルになりやすい財産である不動産に的を絞って、トラブル事例を解説します。
不動産の相続がトラブルになりやすい理由
遺産の中に不動産がある場合に相続人間でトラブルになりやすい理由としては、以下のような点が挙げられます。
・相続人全員の同意が必要であること。
相続手続きのためには遺産分割協議書に相続人全員が実印で押印をして、印鑑証明書を添付する必要があります。
従って、相続人間で話し合いがまとまらないと相続手続きを進めることができません。
・不動産は分けにくい財産であること。
預貯金や現金であれば、自由な割合で分けることが可能です。
また、誰の目にも公平な分け方が可能です。
ところが、建物を複数に分割してそれぞれを各相続人が取得することは無理です。
土地を複数に分割(分筆といいます)も可能ですが、それには様々な問題点があり、あまりオススメできません。
・不動産の主観的な価値は人によって違うこと。
例えば、被相続人名義のマイホームに両親と同居していた子供と、遠く離れた場所に独立している子供とでは、その不動産の利用価値が異なります。
今まで通りに利用を続けたいと考える相続人と売却して換金してしまいたいと考える相続人との間で意見の対立が生じます。
・遺産に占める資産価値の割合が高いこと。
不動産以外の預貯金等が潤沢にあれば、相続人ごとの取得財産の多寡を預貯金等で調整可能なのです。
しかし、不動産の占める資産価値の割合が高くなりがちなことから、預貯金等での調整が難しくなることが多いです。
・客観的な価値も一義的に定まらないこと。
不動産の価値には、固定資産評価額、路線価、公示価格、鑑定評価額等の様々な評価方法があり、評価方法の違いにより数百万円の差が生じることも往々にしてあります。
トラブルにしないために
柔軟で公平な遺産の分割を可能とし、各相続人の納得を得やすい方法としては、相続した不動産を売却し、現金化する方法があります。
ところが、不動産の売却に反対する相続人がいる場合は、この方法は取れません。
被相続人と同居していて、今後も暮らし続けたいと考えている相続人は売却に反対するでしょう。
その場合は、不動産の継続利用を望む相続人が単独で相続し、他の相続人は不動産以外の遺産を相続する内容で遺産分割協議をまとめることになります。
不動産を相続する相続人が他の相続人に不足額(代償金といいます)を支払うことで公平性を保つ場合もあります。
不動産を相続する相続人が代償金を支払うためのまとまった預貯金を持っていない場合もあります。
そのような事態が想定される場合は、被相続人の健在のうちに、被相続人の死亡後に不動産の利用を予定している相続人を受取人とする生命保険をかけておき、代償金の原資にする方法も検討した方が良いかもしれません。
上述した協議をまとめる前提として、不動産の価値の評価で意見が分かれるときは、不動産鑑定士や不動産屋の鑑定を参考にするのが各相続人の納得を得やすいでしょう。
遺言書が有効的
また、相続人間の感情的な行き違いからトラブル化するのを防ぐために遺言が有効なことがあります。
遺言では遺産分割方法の指定ができますが、「付言事項」というのも書くことができます。
「長男○○は、その妻○○と共に献身的に私の晩年の身の回りの世話をしてくれたので」のような文章のことです。
付言事項というのは法律的な拘束力はありませんが、遺言者が遺言をしたときの想いを記載することができます。