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相続における任意売却について

被相続人が、相続人が払いきれない住宅ローンを残して亡くなった場合、相続人が相続放棄を行い、債権者である金融機関の同意を得たうえで、ローンで建てた住宅を売却し、その売却代金をローンの残債務に充当し、住宅ローンの清算を行う方法を相続における任意売却といいます。
以下では、この相続における任意売却について解説します。

任意売却とは

相続が発生した場合に、被相続人が単純承認(相続の無条件の承認)を行うと、相続人は被相続人の債権債務のすべてを、承継することになります。
よって、被相続人に多額の借金などがあった場合、単純承認を行うと、その借金の返済義務も相続人が承継することになります。

このような場合、相続人の全員が相続放棄を行うと、相続財産を相続しないのと引き換えに、借金の返済義務も免れることができます。
相続放棄により、所有者のいなくなった相続財産は、清算手続きに入ります。

任意売却は、この清算手続きの1つの方法です。
任意清算は、被相続人に対する債権者が、被相続人の相続財産に関する利害関係人等の承諾を得て、相続財産を売却し、その売却代金から被相続人から回収できなかった債権の満足を得るという手続きのことをいいます。

任意売却の例について

例えば、Aが3,000万円で建売住宅を購入した場合で、この3,000万円を住宅ローンにより調達しており、住宅購入直後にAさんが亡くなった場合、その相続人である配偶者Bと未成年の子Cが、この住宅を相続により取得すると、原則として、BとCはは3,000万円の住宅ローンも相続します。

BやCに充分な資力があれば、Aさんから引き継いだ住宅ローンを支払っていくことも可能ですが、Bが専業主婦、Cが学生であるような場合には、B及びCは3,000万円の住宅ローンを支払うことはほとんど不可能です。

その場合、BとCが相続の放棄を行い、相続人のいなくなったAの遺産に対し相続財産管理人を選任し、その相続財産管理人が住宅ローンの債権者である金融機関の同意を得たうえで、住宅を売却し、その売却代金を住宅ローンの残債務の充当するというのが、相続放棄による任意売却になります。

任意売却の注意点について

任意売却の場合、裁判所による競売に比べて債務の回収できる金額が大きいという傾向があります。
手続きも、比較的容易です。

なお、任意売却の場合には、相続人から家庭裁判所に対する相続放棄の申述書を必ず提出してもらうことが大切です。

相続放棄は、相続人が相続の開始を知った日から3ヵ月以内に行わなくてはなりまぜん。
さらに、この手続きは家庭裁判所に対する相続放棄の申述書を提出することにより行なわないと有効となりません。
口頭でのみの相続放棄では、無効とされ、任意売却が不可能となる場合がありますので、注意が必要です。

また、相続人が複数いる場合には、任意売却の手続きを行なうためには、相続人の全員が相続放棄の手続きを行なう必要があります。
1人でも相続放棄を行わない者がいると、この手続きはできません。

なお、任意売却の手続きは、競売に比べると簡単だとはいえ、それでも相当に複雑な手続きになりますので、弁護士や司法書士等の専門家に手続きを依頼する方が現実的です。