相続証明書について
不動産を相続すると、その登記名義を被相続人から相続人に変更する相続登記を行います。
その際に必要となるのが相続証明書です。
以下では、この相続証明書について解説します。
相続証明書とは
相続証明書とは、相続登記の際に、対象となる被相続人所有の不動産が、相続登記を申請する相続人に相続されたことを証明する書面です。
例えば、被相続人A所有の不動産を、相続人Bの名義に書き換える際に、対象不動産がAからBに相続されたことを証明する書面が、相続証明書となります。
さて、この相続証明書には、大きく分けて以下の3種類が存在します。
(1)戸籍謄本等
(2)遺言書
(3)遺産分割協議書
以下では、上記の3種類の相続証明書について、それぞれ解説します。
戸籍謄本等が相続証明書になる場合について
相続登記には、法定相続分による登記があります。
これは、民法の規定によれば、相続財産は被相続人の死亡と同時に、法定相続分による法定相続人の共有財産となりますが、この規定に従って相続登記を行うものです。
例えば、被相続人Aの相続人が配偶者B、子C、Dであったとすると、法定相続分はB1/2、C1/4、D1/4となります。
そこで、対象不動産の名義をAから、B(持分1/2)、C(持分1/4)、D(持分1/4)とする法定相続分による法定相続人全員の共有名義とする登記が、法定相続登記となります。
さて、この法定相続登記を行う際の相続証明書は、以下のものになります。
(1)法定相続人の戸籍抄本
(2)被相続人の出生から死亡までの身分関係を明らかにする戸籍謄本等
法定相続登記の場合には、申請人が法定相続人であることと、法定相続分が明らかになればよろしいわけですから、上記の書面が相続証明書になります。
遺言書が相続証明書となる場合について
遺言書によっても、相続登記ができます。
例えば、被相続人A所有の甲不動産について、Aが生前「甲不動産は長男Bに相続させる」という遺言書を残していた場合には、Aの死後、この遺言書で名義をBに変更できます。
このような相続登記の際の相続証明書は、遺言書になります。
なお、遺言書を相続証明書とする場合には、遺言書が公正証書である場合を除き、家庭裁判所による検認手続きを経たうえ、その証明書(検認済証明書)を添える必要があります。
また、被相続人の死亡を証する書面(除籍謄本等)と、被相続人と不動産を相続する相続人の続柄を証明する戸籍謄本等も同時に必要になります。
遺産分割協議書が相続証明書となる場合について
被相続人が遺言書を残さなかった場合には、相続人間の遺産分割協議によって、相続財産の配分を定めるのが一般的です。
その遺産分割協議書において、特定の不動産が特定の相続人に帰属することが協議内容として定められていた場合には、その遺産分割協議によって相続登記ができます。
そして、そのような相続登記の場合には、遺産分割協議の内容を認めた遺産分割協議書が相続証明書となります。
なお、遺産分割協議書を相続証明書として用いる場合には、当該協議書には相続人全員が実印で押印し、全員の印鑑証明書を添える必要があります。
また、被相続人の出生から死亡までの身分関係を明らかにする戸籍謄本等と、相続人全員の戸籍抄本も合わせて必要になります。
遺産分割協議書の原本還付について
なお、遺産分割協議書は、相続登記以外にも様々な場面で使用します。
そこで、相続登記の際、遺産分割協議書のコピーを用意し、遺産分割協議書と一緒に法務局提出すれば、法務局での審査後に、遺産分割協議書原本の返還を受けることができます。
この手続きを原本還付といいます。
原本還付を受けた遺産分割協議書は、被相続人名義の預金の払戻し、有価証券やゴルフ会員権、自動車の名義変更等手続きに利用することができます。
ちなみに、相続登記申請書の提出の際に、相続人と被相続人の関係を明らかにした相続関係説明図を提出すれば、戸籍謄本や印鑑証明書の原本還付も受けることができます。