連れ子に相続権を与えることはできる?
最近では様々な家庭事情があります。
離婚、再婚によって、パートナーが子どもを連れているケースも少なくありません。
そして、相続でトラブルになる代表的な理由として『連れ子問題』があります。(正しくは『非嫡出子』と呼ぶので『連れ子』という表現が適切ではないかも知れませんが、分かりやすい表現として使わせて頂きます)
再婚相手の連れ子に財産を相続させたいというケースでは、必ずと言っていいほど直系の子たちとの確執があらわになってトラブルに発展してしまいます。
今回は、連れ子に相続権を与えることに焦点を当ててみましょう。
1 連れ子に相続権はあるのか?
まずは基本的な考え方です。
連れ子には、相続権がありません。
相続権があるのは「被相続人の血族とその配偶者」であり、連れ子はこれに該当しません。
この規定は民法に定められていますが、民法は明治時代に制定されたもの。
時代の流れに応じて法改正を繰り返してきましたが、やはり基本的な部分は改正されていないのが現実です。
当時の法律家の方々も、まさかこんなにも離婚や再婚が珍しくもない時代が到来するとは思ってもいなかったでしょうね。
では、連れ子に財産を相続させることはできないのか?
答えは「NO」です。
安心してください、ちゃんと連れ子に財産を相続させる方法はあります。
2 連れ子に財産を相続させる方法とは?
連れ子に財産を相続させる方法は2つあります。
ひとつは「養子縁組を結ぶ」、もうひとつは「認知をする」という方法です。
【養子縁組を結ぶ】
財産の持ち主が連れ子と養子縁組を結ぶことによって、連れ子は血族と同視される存在になります。
カンタンにいうと「法律上の子になる」ということです。
法律上の子になれば、立場は「被相続人の血族」と同じ立場ですから、相続権は発生することになります。
【認知をする】
認知とは、生まれた子どもを自分の子であると認めることです。
女性は生まれた子どもが自分の子であることが明らかなので、一般的には男性が自分の子であることを法的に認めることを指します。
認知には3つのパターンがあり
・任意認知…子が自分の子であることを認める、ごく一般的な認知方法
・裁判認知…裁判によって子の父親が決められること
・遺言認知…遺言によって認知する方法
があります。
特に特殊なのが遺言認知で、遺言によって認知し、遺言の執行者が10日以内に届出をすることで認知が認められる方法です。
生前に認知すると配偶者や血族とトラブルに発展するおそれがある場合は、遺言認知も有効でしょう。
認知が活用されるパターンが「事実上の婚姻関係において子どもが出生した場合」つまり「愛人の子ども」です。
相手の女性とは婚姻関係になくとも、認知をすれば生まれた子どもから見て法的にその男性が実親になります。
子の戸籍には父親の欄に男性の名前が載ることになるし、男性の戸籍には子が載ることにもなります。
法的に実子であれば、子には相続権が認められることになるのです。
3 連れ子の相続割合は?
方法次第では連れ子にも相続権が認められることを説明しましたが、連れ子の相続割合はどうでしょうか?
「連れ子は実の子の1/2でしょ?」と思った方は、不正解ですが惜しいですね。
平成25年の民法改正で、嫡出子と非嫡出子の相続割合は同じになりました。
この年、嫡出子と非嫡出子の相続割合が異なることは憲法に違反しているという最高裁判決がなされたため、速やかに民法が改正されたのです。
民法が時代の流れによって改正された事例のひとつですね。
4 まとめ
連れ子への相続について紹介したので、カンタンにまとめておきましょう。
・連れ子(非嫡出子)には相続権がない
・連れ子に相続権を与えるには『養子縁組』と『認知』の2つの方法がある
・連れ子と実子の相続割合は同じ
遺産相続トラブルのうち「連れ子には相続権を認めない!」というものもありますが、遺産分割協議がまとまらないうちに連れ子の親が死亡してしまうと連れ子に相続権が継承されるというケースもあります。
後々のトラブルを回避するためにも、生前に血族の理解を得て連れ子と養子縁組を結ぶことが最も効果的だといえるでしょう。