相続税の非課税枠ってなに?
財産が多いと相続税が高くなる。
誰でも知っている当たり前の知識ですね。
ところが、相続税には『非課税枠』というものが設けられています。
相続税の非課税枠には「この金額までは相続税が課税されません」という『基礎控除』のほか、財産の種別によってさらに非課税になるものがあります。
今回は、相続税の非課税枠についてお話ししましょう。
1 相続税の基礎控除額
相続税の基礎控除額とは、法定相続人の人数によって基本的にこの金額までは相続税が課税されないという非課税枠のことです。
実は、2015年1月1日に基礎控除額の枠組みが改正され、改正以前の4割減となりました。
つまり、以前なら課税されることがなかった程度の財産でも、改正後は課税対象になったということです。
具体的に説明していきましょう。
まずは現行、つまり2015年1月1日以降の基礎控除額の計算です。
現行の基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)」です。
例えば法定相続人が2人の場合は、3,000万円+(600万円×2人)=4,200万円となります。
この場合でいえば、4,200万円を超えない財産については相続税が課税されません。
一方、改正以前は基礎控除額の計算が「5,000万円+(1,000万円×法定相続人の人数)」でした。
同じパターンに照らせば、5,000万円+(1,000万円×2人)=7,000万円になっていたのです。
実は、非課税枠の改正以前は、ほとんどの場合がこの基礎控除額の範囲内で財産が収まっていたので、相続税が課税されるケースのほうが少なかったという実情がありました。
ところが基礎控除額が4割も減ったことで、これまでの制度であれば相続税が課税されなかった人でも相続税が課税されることになりました。
嬉しいことではありませんが、改正によって相続税がより身近になった(なってしまった?)と言えるでしょう。
2 『みなし相続財産』の非課税枠ってなに?
みなし相続財産とは、遺産分割協議などを必要としないが相続税は課税される財産のことです。
ちょっと分かりにくいのですね。
どんなものがみなし相続財産になるのかというと、
・ 生命保険金
・死亡保険金
・死亡退職金
などが該当します。
こうしてみると、故人が元々所有していた財産ではなく、死亡によって給付される金銭が主になりますね。
元々所有していた財産ではないが、故人が遺した財産と同等なので『みなし相続財産』と呼ばれるのです。
みなし相続財産の非課税額の計算は「500万円×相続人の人数」です。
先ほどの例と同じく法定相続人が2人の場合は500万円×2人=1,000万円になります。
例えば故人の死亡によって生命保険金が2,000万円給付されたとします。
すると、2,000万円-1,000万円=1,000万円が相続税の課税対象になります。
相続税対象額の総額を計算する場合には、(不動産や預貯金などの財産+死亡保険金などのみなし相続財産)-(基礎控除額+みなし相続財産の非課税枠)となります。
みなし相続財産は基礎控除額の計算とは異なるので、注意が必要ですね。
3 葬式費用は非課税枠!
基礎控除やみなし相続財産の非課税枠のほかにも『葬式費用』は相続財産から控除できます。
例えば故人の告別式の費用。
告別式の費用による支出は故人の財産から支払ったものとして控除されます。
もし法定相続人が立て替えて支払った場合は、その分も控除されることになります。
告別式の費用のほか、お通夜の費用、火葬や埋葬の費用、僧侶へのお布施なども『葬式費用』としてこれに含まれます。
ただし、参列者のために用意した香典返し、墓石や墓地の購入費用、初七日や法事のための費用は葬式費用には含まれず、控除されません。
4 まとめ
相続税の非課税枠についてお話ししたので、最後にカンタンにおさらいしておきましょう。
・不動産や預貯金などの財産は「3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)」が相続税が非課税になる
・死亡保険金などのみなし相続財産は「500万円×法定相続人の人数」が相続税が非課税になる
・故人の葬式費用は非課税枠の対象になる
いかがでしたか?
基礎控除額の引き下げは最新のニュースとして広く知られていますが、故人の死亡保険金が課税対象になることや非課税枠があること、葬式費用が非課税枠になることを知らなかった方は多いのではないでしょうか?
節税を考えるのであれば、葬式に関する出費の領収証などはきちんと保管しておきましょう。